一人一人が物語の主人公として
卒園を迎える幼児教室
首都大学東京 教授 浜谷直人
まだ寒さが残る3月の暖かな日のこと。子どもたちは泥んこ遊びに盛り上がり、パンツだけになって夢中で遊ぶ姿がありました。通りかかった人は、いまどき珍しい光景に信じられないという表情が混じった笑顔で立ち止まって、子どもたちの元気な様子に思わず見入っていました。
心底から、身体と心が快く楽しいことを出発点にして保育を始める。この幼児教室は、子どもの根っこにある感情や思いを大事にしています。遊びの中で、そこを十分に出し切ったところに、しだいに子どもの個性がにじみ出てきます。それをチャンスと活かして、集団的な活動を構成し組み立てて行きます。自然な流れでお互いのつながりが生まれ、ケンカもするけど、信頼して尊重し合える、そういう仲間集団ができ上がっていきます。
無口で控えめな子どもも、ちょっとしたことでかっとなるやんちゃな子どもも、どんな子どもにも他の子にはないキラッとした一面があることを先生方は信じています。その持ち味が仲間との活動の中で活かされる時、子どもはそれぞれに物語の主人公として活躍します。ワクワクドキドキがいっぱいの波乱万丈のドラマが生まれ展開します。
そういうちびっこ幼児教室体験をくぐりぬけて、子どもたちは仲間と一緒に成長している自分に誇りを持ち、自己肯定感を感じることができる、そういう姿を見ることができます。
泥んこ遊びに夢中になっている、その時間だけを見ると、ただ自由に遊ばせているだけにしか見えないかもしれません。しかし、一年の保育経過を見ると、その背後に、環境を十分に活かした保育の緻密なカリキュラムが潜んでいることが分かります。一人一人の持ち味を活かす即興性の背後に、先生方の深い力量があることも分かります。保護者と地域との信頼関係を丁寧に築いたからこそ実現できる活動であることも分かります。
今日、小学校に向けて分かりやすい能力の促進栽培をうたうような幼児教育は少なくありませんが、ちびっこ幼児教室は、挫折を経験しながらも挑戦していくという豊かな人生を歩む土台をつくる場です。人生の主人公として成長できる、はじめの一歩を歩ませてくれる舞台です。


